僕とゆかりと青空と

1話 再会と…

「春田さん?」

自宅最寄りの駅で、僕はわざとらしくゆかりに声をかけた。

「え?あ、秋月くん?」

ゆかりも僕に気付いて応じてくれた。

「久しぶり!何年振りだっけ?」

「たしか…、6年ぶりだね。」

「帰るところ?」

「うん、秋月くんは?」

「僕も帰るところ。久々に一緒に帰ろうか。」

僕たちは再会を喜びながら、徒歩10分ほどの距離で会話した。
ゆかりは同じ統制大学文学部で、教育学科に入学したらしい。
僕は父親が転勤族になってしまったため、母と二人で暮らしている。母は父親のところに行ったり、戻って来たりを繰り返していて、あまり経済的じゃない気もするけど、まあ慣れているので気にしなくなった。
ゆかりのご両親は、1ヶ月ごとに兄弟夫婦と入れ替わりで田舎の親の介護しているらしく、1ヶ月行って1ヶ月帰ってくるの繰り返しらしい。
そんな話をしていると、お互いの家の近くまで帰ってきた。
話しているとあっという間だ。

「じゃあ、また明日からよろしくね!秋月くん。」

「ああ、そうだね。春田さん、またよろしく!!」

僕は踊りたくなるような気持ちを抑えて、自宅に足を向けた。
…と、その時

「あ、秋月くん!!」

「え?」

「連絡先交換しない?」

「あ、そうだね。」

こういうところが、自分の詰めの甘いところだな、と思いながら、さらに内心舞い上がっている自分がいた。

その日の夜には、思春期で男性で、となると欲求が湧き出してくるわけで。
ゆかりと一緒にいたい、ゆかりを意のままにしたい、ゆかりを抱きたい。
そんな悶々とした気持ちのままほぼ眠れない夜を過ごした。

そんな思いを持ったまま、夜が明ける。
大学のオリエンテーションの日だ。

この日はサークルの勧誘が最も過激になる、…というのは後で知った。
勧誘というよりはアイドルに群がる芸人男どものセクハラ攻撃。あれに近いものを感じた。
ゆかりと途中で合流したけど、あまりの勧誘のすごさにはぐれてしまった。

ちょっと学生会館の建物に入って、人気の少ないところに移動。
ゆかりにメッセージを送ろう…って、圏外かよ!!

「そこのあなた、こちらへ!」

「え?」

不意の呼びかけに振り返ると、西洋魔法使いのような占い師のような、黒装束にフードをかぶったような恰好をした人が椅子と机を構えていた。
声からすると、女性だけど、年齢はわからないな。

「何か用?」

そっけなく応じてみる。

「君はとある女性を想って昨夜眠れなかった。そうだな?」

「…それがなにか?」

「ほう、ごまかさないとはな。その正直さか厚顔無恥さかしらんが、それに免じてこれを授けよう」

その女性は小さな瓶詰を渡してきた。
そしてこちらにかまわず言葉を続ける。

「この魔法の薬を液体に溶かして相手に飲ませてみろ。ヤレるぞ。」

「なぜこれを…僕に?」

「成功報酬だ。成功したら、1週間以内にレポートとうまい棒30本セット持ってこい。逃げたら呪いがかかるからな。」

「はあ?じゃあ、やらないよ。そんなの。」

「拒否権はもうない。その瓶に触れた時点でおまえには呪いがかかっている。」

「ふざけんなよ!今すぐその呪いとやらを解けよ。」

「無理。失敗するか、レポートを出すしか解ける方法はない。」

「呪殺されたら、呪い返して300年祟ってやるからな!!」

僕は捨て台詞を吐きながら、瓶詰を握ったままその場を立ち去った。

しまった。逃げたらどんな呪いがかかるか聞いておくべきだった。
でも、今更聞きに行くのはビビっているのが相手にばれる。
とりあえず、電波の入る場所に移動してゆかりと落ち合おう。

本来の目的である携帯の電波が入るところへ移動した。
…すでにゆかりからメッセージが来ていた。
居場所を確認する内容、サークルに勧誘された内容、先に帰っていいよという内容。

どこにいるか書いていないし、一旦素直に帰ることにした。
『わかった、先に帰ってる』『一般教養とかの選択を極力合わせたいんだけど、あとで作戦会議しない?』とメッセージを送っておいた。

帰宅後、真っ先に瓶詰を確認した。
90mlほどの容量で、瓶には紙が巻き付けられていた。取扱説明書らしい。
『小さじ1杯を1回分として飲ませると、10分後から1時間ほど効果がでる。相手は命令に一切逆らえなくなる。味や副作用は一切ないが、効能切れ後の関係については保証しない。』

…そんな都合の良い薬品があるか。

そんなことを考えながら、瓶詰を眺めていると、メッセージが来たようだ。

『今から戻るけど、どこでする?』

どこでする?って、ゆかりって思ったより大胆…じゃなくて、ここはあの魔法使いだか占い師だかわからないあいつに思い切って騙されてみよう。不思議とそう思えた。

『僕の部屋、散らかっているから、春田さんの家ってだめかな?』

これだけで、かなり冒険しているのが自分でもわかる。
拒否されたら自分の部屋だ。そのあとは…なるようになれ!だ。
『いいよ、30分後に私の家に来てもらっていい?』

『OK、じゃあ30分後!!』

ここからは独り作戦会議だ。
とりあえず、直接飲ませるなんてことができない以上は飲み物に入れるべき。名探偵なんとかでも、眠らせたりする場合は飲み物への混入がお約束だし。
次に飲ませた後だけど、10分後からというので、余裕をもって15分後。しっかり時計を計っておかなければ。
そして、15分後には効果が残り55分ほどということになるから、即刻命令、最悪でも挿入という状態に持っていかなければ。

…できるのか???

少し、というか、かなり不安だけど、部屋に入れる日もそうそうないから、決行するのは今日しかない。

30分後、ゆかりの家のインターフォンを押した。

「はい、どうぞ!」

ゆかりは僕を家に招き入れてくれた。
ゆかりの部屋に入るのは10年ぶりくらいだろうか? 整理整頓されていて、意外とあっさりというか、女子らしくもなければ殺風景でもないような…。

「久しぶりなのはわかるけど、女子の部屋をあまりジロジロ見ないでよね?」

ゆかりは紅茶を乗せた盆を持ってきつつ、注意してきた。

しばらくは真面目に受ける講義のすり合わせ。
1年生だから、一般教養主体で、合わせやすい。
だいたい履修する時間割が決まって、専門科目を埋めて、と。

ここで終わるとまずいので、話を振る。

「そういえば、中学とか高校ってどんな制服姿だったの?」

「え?」

ちょっと、質問のしかたも内容もまずかったかな?と思ったけど

「いたって普通の制服、ブレザーだけど。」

「見てみたいな、卒業アルバムとか見れる?」

「え?ちょっと恥ずかしいな」

「ちょっとだけ!!」

「ちょっと探してみるね。すぐ見つからなかったらまた今度で、ね?」

そう言うと、ゆかりは部屋の外に出た。
僕は瓶詰を取り出して、小さじ一杯分ゆかりのカップに入れた。
ティーセットはスプーンがあるので、ちょうどよかった。

そうこうしてゆかりが戻ってきた。

「ごめんね、すぐには出てこないみたい。」

「こっちこそ、無理言ってごめん。」

戻ってきたゆかりは元居た場所に座ると、紅茶を飲み干した。時刻は16時20分、と。

「あ、冷めちゃったね。代わりのを持ってくる?」

「いや、大丈夫だよ。それより、思ったより春田さんと一緒に受ける科目が多くて安心した。」

「そう?よかった。」

「試験の時、ノート借りられる科目が多いのは助かるし。」

「ふふ。変わらないね。でも、レポート提出の科目も多いかもよ。」

そんな話をしていながら、時計を見た。16時35分。15分経過した。
ふと見ると、ゆかりの様子が少しおかしい。目の焦点が合ってないような…

「ちょっと、紅茶入れ替えてくるね!!」

ゆかりが席を外そうとしたので、とっさに僕は言い放った。

「ダメだ!!部屋から出ちゃいけない。ベッドの上で、命令されるまで座っているんだ!」

言い終わって0.5秒で我に返った。
効果も確認していないのに、僕はなんてことを言ってしまったんだろう!
これで、ゆかりに薬が効いてなかったら、すべてが終わってしまう…。

恐る恐る視線を上げると、ゆかりはベッドに座った。

「わかりました。なんなりと仰せになってください。」

嘘だろ?あの瓶詰の薬品の効果は本物なのか?
頭の中で少し混乱が起こり始めたが、時間がないことを思い出して目的を思い出す。

「大事な話をするから、カーテンを閉めてまたベッドに座るように」

すると、僕の命令通り、ゆかりはカーテンを閉めて、電気をつけてベッドに戻って座った。
薬品の効果は本物だ。そう思えた。

「じゃあ、次は服を脱いで!!」

…これで、効果がなければ今度こそ、ゆかりとの関係が終わる。
そんなことが頭をよぎったが、それはないと確信を持っていた。

「わかりました。」

ゆかりは服を脱ぎ始めた。
カーディガンを脱ぎ、ブラウスのボタンを外し、そして脱ぎ去り、ゆっくりとスカートのホックを外して、落とした。

下着姿になったゆかりは綺麗だった。
細身だけど、胸はかなり大きく感じた。ウェストはかなり細く見える。

僕はゆかりに歩み寄り、強引に唇を奪った。
命令してないから、どんな反応があるかは知らない、抵抗されても構うものか。
…と思っていたら、ゆかりは抵抗してこない。それどころか、そのまま受け入れている。

僕はゆかりの胸を揉んでみた。
やっぱり、ゆかりは抵抗しない。

僕は自分の服を脱ぎ始めた。
一秒でも早く、直接肌を重ね合わせたい。服を着ている自分がもどかしい。

トランクス一枚になって、ゆかりのブラジャーに手をかけた。
ゆかりはホックを外しても抵抗しない。
やがてブラを外して、ゆかりの胸が露わになった。細身の割に大きい。

ゆかりの胸を揉みしだく。ゆかりは声にならない声を出しているけど、反応を楽しんでいる余裕はない。
下も一気にすり下ろして引き抜く。生まれたままの姿のゆかりは人形のように綺麗だった。

我慢できずにこちらもトランクスを脱ぎ捨てる。
指でゆかりの秘部をなぞる。すでに充分濡れているように思えた。

「あ…う…ん…」

ゆかりの思わず出てしまう声が、俺を一層欲情させる。

俺は、カバンからゴムを出して急いで付けると、その先端をゆかりにあてがう。

「いいよね?」

ゆかりはうなずく。

俺はその反応を確認して、ゆっくりとゆかりの中に挿入していく。

「あ…あ…あ…んんんっ」

ゆかりの喘ぎ声とは対称的にこちらは、すんなり奥まで入った。
勝手に腰が動いてしまう。止められない!!
初めての時、男はすぐに射精してしまうというけど、たしかに持たない。

「あ…あぁん…う…く…んんっ!!」

ゆかりが俺を受け入れ、感じてくれている。
そう思うと、俺は一層、腰を激しく振りながら

「ゆかり!俺は…君を俺のものにしたい!!」

返事を聞く前に俺は、頭の中が真っ白になると同時に射精してしまった。
自分の持久力のなさが本当に情けないと思ったけど、充実感があった。

「はあ…はあ…。ありがとう…。」

「え?」

「いろいろ。本当にありがとう。」

ゆかりが何を言っているのかわからない。

「今までね。ずっと待っていたんだよ。
 私に話しかけてくれること。
 私と一緒にいてくれること。
 私を名前で呼んでくれること。
 私を秋月くんのものにしてくれること。
 そして、私の初めてをもらってくれること。」


「え!?」

最後のは、ゆかりから俺のを抜いて気付いた。
たしかに、ゆかりが初めてだったという証拠…赤く染まっていた。

「ゆかり…俺…ごめん…」

「謝らないで。私、初めては秋月くんとがいいな、ってずっと思っていたんだから。」

自然に口を突いて出た言葉。
この娘を好きで本当に良かった。心からそう思う。

「ありがとう。お礼を言うのは俺のほうだね。」

「ふふ。『僕』じゃないんだ!?」

「え?」

「一人称。『僕』から『俺』に変わってるよ。」

「あ…」

気付かなかった。いつの間に…。
いろいろありすぎて、頭の中が全然整理がつかないし、大人の階段を上ったせいか?
でもまあ、とにかく、この瞬間はとても幸せな時間なのは間違いなさそうだ。

…と思った矢先、ゆかりの言葉が突き刺さる。

「そんなことより、せ・き・に・ん…取ってよね!!」

完全に頭が真っ白になった…。

「ふふ。冗談よ。…ねえ、聞こえてる?」

女性って怖い。心底そう思った。