魔導士ヤミゴメ
1話 魔力反動
目が覚めると、見たことのない…いや、あるのだけど、ありえない光景が広がっていた。
寝る前の記憶を思い出す。たしか、オンラインゲーム「ミーのあるある冒険譚」にハマっていた。
寝落ちしたのだと思う。珍しくもないことだ。
だが、気が付くとゲームの中としか思えない景色があった…というわけだ。
これは夢だ。夢に違いない。夢としか考えられない。
でも目が覚める気配がない。
どういうことだろう?
僕は本当にゲームの世界に迷い込んでしまったというのか?
最近、作業ゲーになりつつあったので、設定とかいろいろ思い出すことから始めるべきか…。
たしか、種族は人間とモンスター族と妖精族が存在して、文明は中世くらいだったか。
現実世界との違いは魔法が使えて、同一種族は統一言語だった、ということ。
体力と魔力は寝れば回復するけど、毒は解毒、魔力反動は他者に転嫁しなければならない、だった。
で、僕自身の設定は…
職業は魔導士、魔術士使い見習いから2年で来たっけ?
種族は人間、Lvは79であと1つで大魔導士になれるはず。
とりあえず、町に移動して本当にゲームの世界か確認したい。
「魔力:瞬間移動、タースト」
たしか、これでターストの町へ行けるはず。
…ゲームの世界であれば。
!!
町の入り口に移動した!
ターストの町だ。ゲームの世界の仕様はそのままみたいだ。
っ!!!!
かなりの頭痛が襲ってきた!!
二日酔いの比じゃない。
…。
…!
!!!
思い出した。
寝落ちする前、魔力はほぼゼロになって、歩いてイグストの町に向かっていたんだった。
魔力がマイナスになると魔力反動が起こって、さまざまな支障が出る。
これがゲームのルールだったけど、まさかこんなリアルな頭痛だったとは…。
とりあえず、宿屋!!
宿屋で寝る!!
10tenだったか…。
宿屋で金を払うなり、さっさと部屋に駆け込んで寝る。
………。
目が覚めると…治ってない!!
やっぱり、ゲームと同じだ。寝て、魔力MAXになっても魔力反動は治らない。
やはり、転嫁先を見つけてこの症状を押し付けなければ!!
部屋を出て、チェックアウトしようとすると、困っている女の子。
あの動きの不規則さは町人という感じではない。
お金がなくて泊まれないのか?
…。
…。
…チャンス!!
「そこの魔術士さん、パーティ組まない?」
「え?」
「宿代困っている感じだから声かけてみた。こっちは金はあるけど相棒がいなくなって困っていたんで。」
相棒なんて、8ヶ月前にいなくなっていたけどな。
…リアルで彼女ができたとかで。クソッ!!
「本当ですか?よかったです。まだ初めて3日目なので…」
「魔法系2人だと、得意不得意がはっきりするけど…作戦会議は休んでからにしよう」
「はいっ!」
そういうと、再度チェックイン。連泊だけど、金はあるからいい。
なによりも、合計20tenで魔力反動を押し付けられるのはありがたい。
部屋に入った瞬間、魔法をかける。
「魔力:結界」
「え?何を!!?」
魔法使いが戸惑いの声を上げる。
「ちょっと尋問するためさ」
「え!?何!?何なの!?」
「魔力反動って知っているよね?」
「え!?知っていますけど…」
「あれの治す方法ってどうすればいいの?」
「3つあって、1つめは生き返ること。2つめは他者のMPを自分のMP容量の3倍吸収する。そして、3つめが異性と性交を…って!まさか…!!?」
「なんだかテンプレ回答だな。君まさかNPC?」
「いえ、違いますけど…」
「じゃあ、名前は?」
「ゆ…じゃなかったリリアンですけど…」
「じゃあ、リリアン。楽しもうよ。」
「っ!!…絶対イヤ!!」
「あっそう。
魔力:緊縛」
「あっ!?あ!!これは!!!?」
「レベル一桁がレベル79に勝てるわけないのはわかるよね?」
「え?えええええ!?」
「じゃあ、遠慮なく。」
「いやあぁぁぁぁ!!」
「あ、そうそう。結界を張ってあるから、大声出しても外には聞こえないよ。」
「近づかないで!!」
「いちいちうるさいなあ!!今、頭痛がひどくてイライラしているんだ!!おとなしくしろ!!」
「あなたのような気持ち悪い野郎なんていつかやっつけてやるんだから!!」
その後、ボキャブラリーに欠ける罵詈雑言を10分ほど浴びた。
嫌われ具合の激しさにダメージを受けたような気がするが、魔力反動の頭痛に比べれば誤差の範囲だ。
だが、僕を罵倒した罪は支払ってもらうべきだろう。
「わかったわかった。君の嫌がることはやめてやろう。リリアン。」
「さっさと緊縛を解きなさいよ!この最低野郎!!」
「魔力:吸魔」
「え!!?」
「魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔…」
「これは…まさか!!?」
「魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔…」
「や、やめてええええ!!?」
「魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔…」
「いやあああああああ!!!!」
9時間ほどMPを吸収し続けただろうか?
詠唱し続けるのはだいぶ手間がかかる作業だとは思ったが、なんとかMP容量の10倍吸い取って、魔力反動を収めることができた。
リリアンは3日目とか言ってたな。
レベル1桁では吸収魔法なんて持っているはずもない。
「さようなら、リリアン」
そう言い残すと、僕は部屋を出た。
…その後、すぐにもう一度、同じ宿で別の部屋に入って休んだけどな。
つづく
寝る前の記憶を思い出す。たしか、オンラインゲーム「ミーのあるある冒険譚」にハマっていた。
寝落ちしたのだと思う。珍しくもないことだ。
だが、気が付くとゲームの中としか思えない景色があった…というわけだ。
これは夢だ。夢に違いない。夢としか考えられない。
でも目が覚める気配がない。
どういうことだろう?
僕は本当にゲームの世界に迷い込んでしまったというのか?
最近、作業ゲーになりつつあったので、設定とかいろいろ思い出すことから始めるべきか…。
たしか、種族は人間とモンスター族と妖精族が存在して、文明は中世くらいだったか。
現実世界との違いは魔法が使えて、同一種族は統一言語だった、ということ。
体力と魔力は寝れば回復するけど、毒は解毒、魔力反動は他者に転嫁しなければならない、だった。
で、僕自身の設定は…
職業は魔導士、魔術士使い見習いから2年で来たっけ?
種族は人間、Lvは79であと1つで大魔導士になれるはず。
とりあえず、町に移動して本当にゲームの世界か確認したい。
「魔力:瞬間移動、タースト」
たしか、これでターストの町へ行けるはず。
…ゲームの世界であれば。
!!
町の入り口に移動した!
ターストの町だ。ゲームの世界の仕様はそのままみたいだ。
っ!!!!
かなりの頭痛が襲ってきた!!
二日酔いの比じゃない。
…。
…!
!!!
思い出した。
寝落ちする前、魔力はほぼゼロになって、歩いてイグストの町に向かっていたんだった。
魔力がマイナスになると魔力反動が起こって、さまざまな支障が出る。
これがゲームのルールだったけど、まさかこんなリアルな頭痛だったとは…。
とりあえず、宿屋!!
宿屋で寝る!!
10tenだったか…。
宿屋で金を払うなり、さっさと部屋に駆け込んで寝る。
………。
目が覚めると…治ってない!!
やっぱり、ゲームと同じだ。寝て、魔力MAXになっても魔力反動は治らない。
やはり、転嫁先を見つけてこの症状を押し付けなければ!!
部屋を出て、チェックアウトしようとすると、困っている女の子。
あの動きの不規則さは町人という感じではない。
お金がなくて泊まれないのか?
…。
…。
…チャンス!!
「そこの魔術士さん、パーティ組まない?」
「え?」
「宿代困っている感じだから声かけてみた。こっちは金はあるけど相棒がいなくなって困っていたんで。」
相棒なんて、8ヶ月前にいなくなっていたけどな。
…リアルで彼女ができたとかで。クソッ!!
「本当ですか?よかったです。まだ初めて3日目なので…」
「魔法系2人だと、得意不得意がはっきりするけど…作戦会議は休んでからにしよう」
「はいっ!」
そういうと、再度チェックイン。連泊だけど、金はあるからいい。
なによりも、合計20tenで魔力反動を押し付けられるのはありがたい。
部屋に入った瞬間、魔法をかける。
「魔力:結界」
「え?何を!!?」
魔法使いが戸惑いの声を上げる。
「ちょっと尋問するためさ」
「え!?何!?何なの!?」
「魔力反動って知っているよね?」
「え!?知っていますけど…」
「あれの治す方法ってどうすればいいの?」
「3つあって、1つめは生き返ること。2つめは他者のMPを自分のMP容量の3倍吸収する。そして、3つめが異性と性交を…って!まさか…!!?」
「なんだかテンプレ回答だな。君まさかNPC?」
「いえ、違いますけど…」
「じゃあ、名前は?」
「ゆ…じゃなかったリリアンですけど…」
「じゃあ、リリアン。楽しもうよ。」
「っ!!…絶対イヤ!!」
「あっそう。
魔力:緊縛」
「あっ!?あ!!これは!!!?」
「レベル一桁がレベル79に勝てるわけないのはわかるよね?」
「え?えええええ!?」
「じゃあ、遠慮なく。」
「いやあぁぁぁぁ!!」
「あ、そうそう。結界を張ってあるから、大声出しても外には聞こえないよ。」
「近づかないで!!」
「いちいちうるさいなあ!!今、頭痛がひどくてイライラしているんだ!!おとなしくしろ!!」
「あなたのような気持ち悪い野郎なんていつかやっつけてやるんだから!!」
その後、ボキャブラリーに欠ける罵詈雑言を10分ほど浴びた。
嫌われ具合の激しさにダメージを受けたような気がするが、魔力反動の頭痛に比べれば誤差の範囲だ。
だが、僕を罵倒した罪は支払ってもらうべきだろう。
「わかったわかった。君の嫌がることはやめてやろう。リリアン。」
「さっさと緊縛を解きなさいよ!この最低野郎!!」
「魔力:吸魔」
「え!!?」
「魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔…」
「これは…まさか!!?」
「魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔…」
「や、やめてええええ!!?」
「魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔、魔力:吸魔…」
「いやあああああああ!!!!」
9時間ほどMPを吸収し続けただろうか?
詠唱し続けるのはだいぶ手間がかかる作業だとは思ったが、なんとかMP容量の10倍吸い取って、魔力反動を収めることができた。
リリアンは3日目とか言ってたな。
レベル1桁では吸収魔法なんて持っているはずもない。
「さようなら、リリアン」
そう言い残すと、僕は部屋を出た。
…その後、すぐにもう一度、同じ宿で別の部屋に入って休んだけどな。
つづく